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シリーズ一覧
週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~
気まぐれな女子高生の日常は、少しずつ変化していく。
彼女――宮城は変だ。週に一回五千円で、私に命令する権利を買う。一緒にゲームしたり、お菓子を食べさせたり、気分次第で危ない命令も時々。秘密を共有し始めてもう半年経つけれど、彼女は「私たちは友達じゃない」なんて言う。ねぇ宮城、これが友情でないのなら、私たちはどういう関係なの?
あの人――仙台さんでなければいけない理由は、今も別にない。私のふとした思い付きに彼女が乗った、ただそれだけ。だから私は、どんな命令も拒まない彼女を今日も試す。……次の春、もし別のクラスになったとしても彼女はこの関係を続けてくれるだろうか。今は、それがちょっとだけ気がかりだ。
週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~
淡くもつれた関係は、高校最後の夏を前に揺れ動く――。
長い休みは憂鬱だ。一人でいることには慣れているけど、一人でいることが好きなわけじゃない。高校最後の夏休みは、みんな忙しい。仙台さんとだって、会うのは”放課後”だけというルールだ。なのに彼女は『家庭教師になってあげる』なんて提案してきて。……キスしたこと、気にしてるのは私だけなの?
つまらない。面白くない。キスしても何も変わらない宮城に、もうすぐ来る長い休みに、そう思う。だから、宮城に提案した。『休み中も宮城に会いたい』そう思っているのかは自分でもわからないし、距離を置くべきなのはわかっている。……でも、本当は彼女から返事が来ることを、私はたぶん期待している。
週に一度クラスメイトを買う話3 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~
曖昧になるルールと踏み込めない距離。この関係の行く先は――?
夏休みが終われば、全て元通りになると思っていた。曖昧になったルールも、仙台さんとの距離も。なのに、彼女だけが未だに変で、「同じ大学受けたら?」なんて言いだす始末。そんなことを言われても、卒業後も一緒にいる理由はないし、彼女の将来に興味はない。そう、全く、少しも、私は興味ないのだ。
夏休みが終われば、進路の話になるのは自然なことだ。例えば宮城に、私と同じ大学への進学を提案してみたり。もちろん、宮城がそんな未来を考えていないことは知っている。それでももし、彼女が私と一緒の未来を少しでも考えてくれたら――そんなことを期待する私はやっぱりずるいのかもしれない。
週に一度クラスメイトを買う話4 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~
巡る春に、迫る期限。二人が選ぶ未来とは――?
春になったら、この関係は終わりだ。でも、今はまだ簡単に会えるし、会う理由も作れる――たとえ冬休みであっても。仙台さんに会いたいと思うことも、触れたいと思うことも、全部ルールを最初に破った彼女のせいだから。だから責任をとってもらわないと困るのに……仙台さんはまだ何も言ってこない。
春になったら、この関係は終わりだ。たとえ近くの大学に進もうと、今と全く同じではなくなる。それでもこの先の未来で、隣に宮城がいてほしい。今そう願ってしまうことは契約違反だろうか? その問いの答えを、私は彼女の口から聞きたいと思ってしまっている。「――宮城は私に会いたくない?」
週に一度クラスメイトを買う話5 ~ふたりの秘密は一つ屋根の下~
「おはよ」今日も彼女の声から始まる
春になり、私には”できないこと”が増えた。ルームメイトになった宮城との距離は、前よりずっと近いはずなのにどこか気まずくて。触れることも、キスすることも、会話さえもままならない。これまでの当たり前を取り戻すために、五千円に代わる新たな言い訳が――新しいルールが私たちには必要だ。
春になり、私には”分からないこと”が増えた。使われていなかった五千円とルームメイトになった仙台さん。その事実は、当たり前のように解釈していたこの関係を、180度違うものに変えてしまって。どうしてあの時、仙台さんは――今更湧き上がる疑問の答えを、私は知りたいのかどうかも分からない。
週に一度クラスメイトを買う話6 ~ふたりの秘密は一つ屋根の下~
「行ってきます」特別じゃない、ふたりの休日。
ルームメイトとは言えないことをしたあの日から、宮城が家に帰ってこなくなった。行先は分かっている。捕まえに行くべきだとも思う。それなのに、あの日宮城に触れて自覚してしまった”認めたくない感情”が、私の足を重くする。本当に、宮城はいてもいなくても私の感情を左右する、面倒くさいヤツだ。
早く帰った方がいい。それは分かっているはずなのに、帰らずにいた時間が仙台さんへの会いにくさを加速させている。その一方で『仙台さんは今日どう過ごしたのだろう』なんて考えているのもまた事実で。自分で作った距離は自分で縮めなくてはいけない――分かっているけど、今日も私は帰れそうにない。

