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異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する 特設SS
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「くっ! 間に合うか!?」
 放課後、俺は急いでとある場所に向かっていた。
 だが、目的地に到着すると、そこにはすでに買い物をしている主婦の皆様が。
「出遅れた!」
 そこには『特売』シールが貼られた様々な商品が置かれており、歴戦の主婦の皆様がお買い得商品を求めて争っていた。
 ここでは一瞬のスキが命取りになる……下手をすると【大魔境】より危険だろう。
 急いでその戦いに参戦しようとしたものの、一足遅く、売り場には何も残っていなかった。
「あぁ……今回は間に合わなかったかぁ」
 一人暮らしを始めてからは、体調に気を遣って自炊を続けてきたので料理は得意だったが、貧乏であることに変わりはなく、スーパーで激安のカップ麺などを見つけた時は、それを食べることもあった。
 異世界で手に入れた【換金】スキルのおかげでお金には不自由がなくなったとはいえ、体に染みついた貧乏性はそう簡単に変わらない。今も基本的には節約生活を送っている。
 今回の特売では卵を狙っていたのだが、手に入らなかったのなら仕方がない。
 ここから別のスーパーまで移動しようにも、そちらの特売も終わっているころだ。
 卵は諦め、他に切らしていた物を購入すると、レジのおばさんが声をかけてくる。
「あら、優夜ちゃん。今回はどうだった?」
「いやぁ、間に合いませんでしたね……」
 ここのスーパーだけでなく、よく利用する他のスーパーでも、こうして俺のことを覚えてくれたおばさんが話しかけてくれたりする。
「そりゃ残念だったね……ここだけの話、明日も卵の特売があるから、次こそ間に合うといいね」
「本当ですか? ありがとうございます!」
 このように、お得な情報も教えてくれるので、ありがたかった。
 おばさんたちと挨拶をして、そのまま帰路につくと、その途中で大きな荷物を持ったおばあさんの姿が目に入った。
 そのおばあさんはどうやら階段を上がろうとしているようだが、見るからに大変そうだ。
 そんなおばあさんに、俺は気づいた時には声をかけていた。
「おばあさん、手伝いましょうか?」
「え? あ、いいのかい?」
「もちろん」
 俺は買い物袋とおばあさんの荷物を片手で抱えると、そのままおばあさんを背負った。
「おやまぁ、お兄さん、力持ちだねぇ」
「あははは……それじゃあ行きますよ」
 異世界でレベルアップしてきたおかげで、難なくおばあさんを運ぶことができた。こうやって、昔はできなかったことができるようになったのは、レベルアップしてよかったなと思う瞬間だ。
 階段を上がりきると、おばあさんが声をかけてくる。
「ここまでありがとうね。もう大丈夫だよ」
「本当ですか? 家まで運びますよ?」
「いいのよ。本当にありがとうね」
 おばあさんがそう言うのでそこで降ろし、おばあさんが頭を下げて去っていくのを見送った。
 今度こそ家に帰ろうと再び帰路につくと、地図を片手に困った様子で周囲を見渡すおじいさんの姿が。
「どうされました?」
「あ、いや、ここまで行きたいんじゃが、どうも道が分からんで……」
「……ここなら俺、分かるんで、案内しますよ」
「本当かい? すまんなぁ」
 おじいさんのお孫さんの話を聞きながら道を案内する俺。
 楽しそうに話すおじいさんを見て、俺もおじいちゃんのことを思いだした。
 無事に目的地まで案内すると、おじいさんは頭を下げてきた。
「本当に助かったよ。ありがとう」
「いえいえ。それじゃ……」
 家からは離れてしまったが、おじいさんとお話できたのも楽しかったし、よかったな。
 ようやく家に辿り着くとすっかり遅めの時間になっており、お腹を空かせたオーマさんたちが不満の声を上げてきた。
『どこをほっつき歩いていた! さっさと飯を作れ!』
「空腹。ご飯欲しい」
「ふご~」
「ぴ?」
「わふ……」
 唯一ナイトだけがオーマさんたちの物言いに呆れており、そんな皆を見て、俺も苦笑いを浮かべながら、晩御飯の支度を始めた。
 何だかんだ色々とあったが、今日も楽しかったなと、そう思うのだった。


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